2013年07月11日

【 】書き部分を画像に置き換える

DTP作業者にとっての難易度 ★★★☆☆(3)

文章中でマークなどの画像を使用する場合、編集者はあらかじめ決められた方法(たとえば【 】書き)で表記しておき、その箇所に画像を配置する作業はDTP作業者に委ねるケースが多いと思います。

依頼されたDTP作業者は、多くの場合「検索と置換」機能によって文字を画像に置き換えます。【 】書きの表記に不備がなければ、素早く、確実に該当箇所に画像をレイアウトすることが可能です。実際に動画をご覧いただきましょう。


置換の手順

動画内で実行した手順は以下の通りです。

まず、画像(を読み込んだグラフィックフレーム)を選択してコピーします。クリップボードにオブジェクトが記憶されます。
「検索と置換」ダイアログの「検索文字列」欄に【改正】と入力します。
「置換文字列」欄は右側の「@」マークから「その他」→「クリップボードの内容(書式設定なし)」を選択します。この結果、「置換文字列」欄には~Cと入力されます。
必要に応じて、対象とする段落スタイルなどを設定します。
上記の設定で「すべてを置換」を実行すると、【改正】と入力されていた箇所が、先にクリップボードに記憶しておいたオブジェクトに置換されます。

挿入されたオブジェクト(アンカー付きオブジェクト)は文字や行の増減に伴って移動します。文字列に組み込まれた状態と言っていいでしょう。

これで万事OK……と考えることもできます。しかし敢えて問題点を挙げるとしたら「作業後に特定のマーク(たとえば「POINTマーク」)を探そうと思っても、その手がかりとなる文字列が存在しないこと」だと思います。特定のマークが存在するページ(ノンブル)を索引や目次に反映したい場合、あるいは特定のマークを削除したい場合などに戸惑うことになるかもしれません。

※このあたりの具体例は後日あらためてご紹介したいと思います。



文字列を残し、その直前にマークを挿入する

【 】書きの文字列を削除せずに残すためには「検索と置換」ダイアログの設定を少し変更する必要があります。動画をご覧ください。


「置換文字列」欄は~Cの後に$0を加えて~C$0と設定します。$0は、「検索文字列」欄の内容をそのまま使用する、という意味です。この状態で「すべてを置換」を実行すればアンカー付きオブジェクトの挿入後に【改正】も消えずに残ります。

アンカー付きオブジェクトを文字列に重ねる

上記作業では、工場出荷時の設定によりアンカー付きオブジェクトが文字列の直前に挿入されていました。このまま【改正】などの文字列が表示・印刷されては困りますから【改正】の文字を隠す設定をおこないましょう。そのためには「オブジェクト」メニュー→「アンカー付きオブジェクト」→「オプション」の設定を変更します。動画をご覧ください。


設定を工場出荷時の「インライン」から「カスタム」に変更するとアンカー付きオブジェクトが文字列を押しのけることがなくなり、オブジェクト後方の文字列(【改正】)はオブジェクトの背面に存在する状態になります。

※この設定をオブジェクトスタイルとして登録し、コピー前のオブジェクトに適用しておけば置換後のオブジェクトにもすぐ反映されます。



【 】書きの文字列がアンカー付きオブジェクトに隠れるよう正規表現スタイルを設定する


先の動画の最終場面では、【改正】はオブジェクトから少しはみ出した状態になっています。【改正】などの文字列を前面オブジェクトの幅に収めるためには正規表現スタイルで「水平比率」などを調整すると良いでしょう(天地方向にもはみ出さないよう「垂直比率」も調整すると安心です)。また、その際に文字色なども変更しておくと置換前から「ここにマークを表示する」ということが分かりやすいと思います。

では、正規表現スタイルを設定した後の動画をご覧いただきましょう。「検索と置換」の実行後もオブジェクトの背面に(ちょうど同じ幅で)文字列が存在することが分かります。

※正規表現スタイルで使用する文字スタイルの設定では注意すべき点が2つあります。1つは「文字前のアキ量」および「文字後のアキ量」を「ベタ」にしておくこと。これを忘れるとジャスティファイにより文字間が開き、オブジェクトの背面からはみ出すことがあります。もう1つは「分割禁止」を設定しておくこと。これを忘れると【 】書きが折り返し改行位置にさしかかった場合に2行に分断されてオブジェクトが行からはみ出します(カッコ内が和文などの場合)。



【 】書きの文字列の利用例

最後に、上記の方法でアンカー付きオブジェクトをレイアウトしたケースで、作業後に【 】書きの文字列を利用する例を1つご覧いただきましょう。
以下の動画では【POINTS】という文字列の直前に存在するアンカー付きオブジェクトのみを削除しています。


この作業にも「検索と置換」ダイアログを使用しています。
「検索文字列」は~a(【POINTS】)としています。アンカー付きオブジェクト(~a)に続いて【POINTS】という文字列が入力されている箇所を検索する……という設定です。なお【POINTS】を半角カッコで囲んでいるのは、この文字列を置換後に使用するためです。
「置換文字列」は$1としています。これは「1つ目の半角カッコ内の文字列をそのまま使用する」という意味です。今回の場合は【POINTS】を、そのまま使用するということになります。

長くなりましたが、具体的な手順はDTP作業者が理解していれば良い話で編集者の方はご存じなくても構わないと思います。ただ、文字列を画像(アンカー付きオブジェクト」)に置換した後に、それを探し出す必要があるのかないのか……については編集者の方にご判断いただくことになると思われます。その点、事前に十分に打ち合わせをしていただくとDTP作業者も安心して作業に取りかかれると思います。
サンプルデータはこちら《0710minimum.zip》です(CS4以降)。
posted by 照山裕爾 at 03:22| Comment(3) | TrackBack(0) | InDesign-その他の機能 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
グラフィックフレームの塗り色を「白」にしておくこととか、必要があれば正規表現スタイルで文字間を調整することなどはサンプルファイルでご確認いただければと思います。ただでさえ文章をコンパクトにするのが苦手なので、すみません。
Posted by 照山裕爾 at 2013年07月11日 03:49
私ならこうするかな〜という案です.

・該当のインラインオブジェクトに文字スタイルを適用しておく

★探す場合: その文字スタイルを検索する

★索引や目次にする場合:
 こちらのスクリプトでその文字スタイルを指定し、抽出する
 http://72.way-nifty.com/blog/2012/05/indesignmacappl.html
Posted by ものかの at 2013年07月11日 12:19
ものかのさん
コメントありがとうございます。

オブジェクト(のマーカー)に文字スタイルを適用するわけですね。私の方法の場合は文字を隠し損ねてしまう可能性がありますが、その心配がないのが良いですね。

スクリプトもご紹介いただき、ありがとうございます。今回のケース以外にも使う場面がいろいろありそうです。試してみます。
Posted by 照山裕爾 at 2013年07月11日 14:47
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