DTP作業者にとっての難易度 ★★★★☆(4)
今回は「正規表現スタイルで、こんなこともできる」という少し変わった例をご紹介します。
囲み文字やベタ丸白抜き文字をマークとして使用する場面は多いと思います。このような時、DTP作業者は「マーク用の画像を作成して使用する」「●と漢字を重ねて目的のマークの体裁にする」などの方法で問題を解決します。今回は正規表現スタイル機能を使うことで後者の方法「●と漢字を重ねて〜」の作業負担を軽くしましょう。
まずは、正規表現スタイルを設定する前の状態と後の状態を動画で見比べてください。ベタ丸白抜き文字用の設定に加え、段落行頭の括弧書きアルファベット部分の体裁も整えています。
正規表現スタイルの設定は下図の通りです。
※DTP作業者の方へ/最下部からサンプルデータがダウンロードできますので、詳細はそちらでご確認ください。

以下、この4つの設定について簡単にご紹介します。
正規表現スタイル・4つのステップ
ベタ丸に文字スタイルを適用
下図は正規表現スタイル設定前の状態です。『●』と、その直後の文字を組み合わせてベタ丸白抜き文字用にする予定です。※という表示はタブが入力されていることを示します。

まずは『●』の文字色、拡大率、字送りなどを調整して下図の体裁にします。字送り値をマイナスにすることで、直後の文字が『●』に重なった状態になります。

白抜き文字用の文字スタイルを適用
次にベタ丸の直後の文字の文字色、拡大率、前後のアキを調整して下図の体裁にします。
正規表現設定ダイアログは『(?<=●)[名動形副代接前]』と設定しました。『(?<=●)』は直前の文字が『●』という条件を示します。また『[名動形副代接前]』は『名』『動』『形』『副』『代』『接』『前』のいずれか1文字という意味です。
※『●』の直後がどんな文字でも構わないのであれば『[名動形副代接前]』の代わりに『 . 』(半角ピリオド)を入力します。
行頭の括弧に文字スタイルを適用
行頭の始め(起こし)括弧とアルファベット直後の終わり(受け)括弧を、等幅四分のスリムな括弧にします。
正規表現設定ダイアログは『^(|)(?=\t)』と設定しました。『|』(またはという意味)より前の『^(』は「段落行頭直後の始め括弧」という意味です。後半の『)(?=\t)』は「直後にタブが存在する終わり括弧」という意味です。
括弧内のアルファベットに文字スタイルを適用
アルファベットは文字によって文字幅が異なることが多いため、ここまでの設定では終わり括弧の位置が正確に揃わないことがあります。そこで括弧に挟まれたアルファベットを等幅全角字形とし、さらに文字の前後をベタと指定します。
正規表現設定ダイアログは『(?<=()[A-Z](?=))』と設定しました。『(?<=()』は「直前が始め括弧」という条件、『(?=))』は「直後が終わり括弧」という条件です。『[A-Z]』は「大文字アルファベットのうち1文字」という意味です。
Wordにおける編集者の作業
上記の正規表現スタイルを使用するためにはテキストデータに『●動』などのように入力しておけば良いわけですが、少し面倒です。入力漏れの可能性もありますし、『動』と直後の文字の書式が変わらないため確認ミスのおそれもありそうです。そこでテキストデータ作成時は『●』を入力するのではなく『動』などの文字にWordの蛍光ペン機能を色をつけておくことをお勧めします。
すべてのテキストデータが完成してから、Wordの置換機能により蛍光ペン表示の直前に『●』を入力することができます。
下図は置換時の設定です。
※チェックボックスなどの操作については上の動画でご確認ください。

おまけ……四角囲みの1桁・2桁数字
もう1つだけ例をお見せしましょう。正規表現スタイルで『□23』などを四角囲みの数字にしています。数字が1桁の場合は等幅半角字形、2桁の場合は等幅三分字形として『□』の中に収まるよう調整しています。今回の2つの例は、少し設定が面倒で微調整も必要なものです。実際の業務の際はDTP作業者に事前準備の時間を十分に与えていただけますようお願いします。
サンプルデータ(2例)はこちら《minimum0530.zip》です(CS4以降)。