DTP作業者にとっての難易度 ★★★☆☆(3)
本文中に「第x章を参照」など決まった言い回しによる表記部分が多く存在する印刷物で「章番号部分だけフォントを変えたい」というケースはよくあると思います。
このような時、正規表現スタイルを適切に使えば漏れなく文字スタイルを適用することが可能です。
なお、正規表現スタイルとは何かご存じない方は《特定の文字に文字スタイルを自動適用……正規表現スタイル》をお読みください。
例その1
まずは『第x章』という表記部分を太いゴシックに、『xxページ』という表記のうちの数字部分だけを太い明朝にするケースを見てみましょう。

下図は、この時の設定内容です。
※DTP作業者が理解すべき内容なので、難しい方は読み飛ばしても構いません。

上段は『第\d+章』に対して『太いゴシック』という名称の文字スタイルを適用するという内容になっています。
『\d』は欧文数字、『+』は1回以上の繰り返し(各回は同じ文字でなくて構いません)という意味です。ですから『第1章』でも『第1234章』でも文字スタイル適用の対象になります。
下段は『\d+(?=ページ)』に対して『太い明朝』という名称の文字スタイルを適用するという内容になっています。
『\d+』は上記と同様に1桁以上の数字です。『(?=ページ)』は「数字の直後に『ページ』という文字が続くこと」という条件を示しています。
※『(?!ページ)』と書き換えると「直後に『ページ』という文字が続かないこと」という意味になります。また別の記述方法で直前の文字の条件を設定することも可能です。
例その2
次に『第x章』だけでなく『第x章x』や『第x章x.x』など節・項などを示す文字も太いゴシックにするケースを見てみましょう。

下図は、最終的な設定内容です。

『第\d+章』は1つめの例と同じです。
それに続く『[\d\.A-Z]*』の『[ ]』内に入力されている『\d』は欧文数字、『\.』は半角(欧文)ピリオド、『A-Z』はAからZまでのいずれかの欧文文字を示しています。
『[ ]*』は『[ ]』内に示す文字いずれかを0回以上繰り返すという意味です。0回、つまり存在しなくても構いませんし、1回でも10回でも100回でも構いません。
※つまり今回の設定では『12...C.AX8.65』などの表記でも良いことになります。ピリオドの連続を許さないとか、アルファベットは最後に1つだけなどの設定も可能ですが、今回は説明を省略します。
例その3
最後に「第x章xからxを参照」『本章xおよびx』などのように、節・項などを示す文字の間に読点や単語が挟まっているケースについて簡単に見ておきましょう。

流れとしては、まずは『本章1および3』などに対してまとめて太いゴシックを適用。その後、数字やアルファベットに挟まれた『および』などの文字列に対して細い明朝を適用……という設定をしています。

ここでは詳しくは説明しませんが、上段のテキスト欄は『(本章|第\d+章)(\d+(\.\d+(\.\d+(\.[A-Z])?)?)?)?((と|から|または|および|ならびに|、)[\d\.A-Z]+)*』、下段のテキスト欄は『(?<=[\dA-Z])(と|から|または|および|ならびに|、)(?=[\d\.A-Z])』となっています。
このように正規表現スタイルを活用すれば、Word原稿上あるいはプリントした紙の上で「この部分はゴシックに」などマーカ指定をする必要がなくなり、編集者の方の負担は大幅に軽減すると思います。ぜひDTP作業者とご相談のうえ、ご活用ください。
※どのような言い回しパターンがあり得るのかを事前に検討し、十分にテストしないと思わぬミスが発生する可能性もあります。慎重に運用してください。