2013年06月06日

正規表現スタイルの活用例……インタビュー記事で人名の書式を指定する

DTP作業者にとっての難易度 ★★☆☆☆(2)

本文を明朝体で組むインタビュー記事で、下図のように人名をゴシック体にしたい……というケースを考えます。これが自動的に書式指定されるのであれば、編集者の方は入稿前の準備作業(マーカによる指示など)も必要なくなりますし、校正時の指定漏れチェックも楽になるはずです。

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上図のように
■段落行頭の『人名:』をゴシックにする。
■『人名:』から始まる段落行頭は字下げしない。その他の段落行頭は字下げのまま。
という体裁を目指します。

※作業前に段落行頭が字下げされているのは、スペースを入力しているのではなく文字組みプリセットで『行末約物全角/半角・段落1字下げ』を選択しているためです。この設定は最後まで変更しません。


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『先頭文字スタイル』機能を試してみる


InDesignでは段落スタイルに対して『先頭文字スタイル』というものを設定できます。これは「段落行頭から最初の2文字だけ文字スタイルを変える」「段落行頭から全角コロンまでは文字スタイルを変える」などを実現できる機能です。段落スタイルを試す前に、この機能を使ってみましょう。

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上図のように設定してみると、無関係なところまで文字スタイルが適用されてしまいました。

※上図は『段落行頭から1つ目の全角コロンまでの文字スタイルを「ゴシ」にする』という設定です。


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全角コロンが含まれない段落(3つめの段落)は全体がゴシックになっています。これでは困るので、やはり正規表現スタイルの使用を考えることにしましょう。

『正規表現スタイル』機能を使う

段落行頭から全角コロンまでをゴシックに

今度は正規表現スタイルを使用します。まずは下図のように設定してみましょう。

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設定は『^.+?:』となっています。
『^』は段落行頭、『.』は任意の文字、『+』は1回以上の繰り返し、『:』は全角コロンです。なお『?』は最短一致という条件を示します。これは『段落内に全角コロンが複数存在した場合、最も早く登場した全角コロンまでを対象にする』ために必要となります。

※この『?』がないと、段落内に全角コロンが複数存在した場合、最も最後の全角コロンまでが対象になってしまいます(最長一致)。



この結果、下図の状態になりました。

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全角コロンが含まれない段落は明朝のままなので問題ありません。しかし最終段落は、不要な部分がゴシックになっています。

これは最終段落では『(注:留学先)』部分で、人名とは関係なく全角コロンを使用しているためです。
記号を全角コロン以外に変更してしまえば問題は解決しますが、そうもいかない時もあるでしょう。では、解決法を考えます。

条件を絞る

たとえば人名としては『原』『山田』『安孫子』の3つしか登場しないと条件が決まっていれば、下図のように設定すれば良いでしょう。

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設定は『^原:|^山田:|^安孫子:』となっています。
これまでも何度かご説明しましたが『|』は『または』という意味です。この方法なら、確実に段落行頭の『原:』『山田:』『安孫子:』をゴシックにすることができます。

文字数で絞ることも考えられます。他の人名も登場する可能性がある場合は、このほうが良いかもしれません。条件を『段落行等の3文字以内+全角コロン』とするのであれば下図のように設定します。

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設定は『^.{1,3}:』となっています。
『{1,3}』は、その直前の『.』の繰り返し回数の設定です。『1回から3回まで』という条件を示しています。

※『^..?.?』という書き方もあります。1回目の『.』は必須。2回目、3回目の『.』は、あってもなくても良いという意味になります。



これらのように条件を絞り込めば、下図のように目的の文字のみがゴシックになります。

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段落行頭のアキをベタにする

最後に、人名と段落行頭のアキをベタにします。まずは『文字前のアキ量』を『ベタ』と設定した文字スタイルを用意します。

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正規表現スタイルには、下図の設定を追加します。

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設定は『^.(?=.{0,2}:)』となっています。
『^.』は『段落行頭の1文字』が対象だという意味です。『(?=.{0,2}:)』は、その直後の文字に関する条件を示しています。『.』を『0から2回』繰り返した後に『:』(全角コロン)が続くこと……というのが今回の条件です。

※『^.(?=.?.?:)』と書くこともできます。


この結果、下図のように人名と段落行頭のアキがベタになりました。以上で完成です。

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今回のようなケースでは、人名からスタートする段落用に別の段落スタイル(字下げなしの文字組みプリセットの設定を変更したもの)を用意するという考え方もあるとは思います。しかし修正の過程で複数の段落を連結させたり、分割したりする可能性も考えられるので、1つの段落スタイルで処理できるよう考えました。

サンプルデータはこちらminimum0606e.zipです(CS4以降)。
posted by 照山裕爾 at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | InDesign-書式・スタイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月30日

正規表現スタイルの活用例……文字を組み合わせて外字のような体裁に

DTP作業者にとっての難易度 ★★★★☆(4)

今回は「正規表現スタイルで、こんなこともできる」という少し変わった例をご紹介します。

囲み文字やベタ丸白抜き文字をマークとして使用する場面は多いと思います。このような時、DTP作業者は「マーク用の画像を作成して使用する」「●と漢字を重ねて目的のマークの体裁にする」などの方法で問題を解決します。今回は正規表現スタイル機能を使うことで後者の方法「●と漢字を重ねて〜」の作業負担を軽くしましょう。

まずは、正規表現スタイルを設定する前の状態と後の状態を動画で見比べてください。ベタ丸白抜き文字用の設定に加え、段落行頭の括弧書きアルファベット部分の体裁も整えています。


正規表現スタイルの設定は下図の通りです。

※DTP作業者の方へ/最下部からサンプルデータがダウンロードできますので、詳細はそちらでご確認ください。

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以下、この4つの設定について簡単にご紹介します。

正規表現スタイル・4つのステップ


ベタ丸に文字スタイルを適用

下図は正規表現スタイル設定前の状態です。『●』と、その直後の文字を組み合わせてベタ丸白抜き文字用にする予定です。

0530-100.pngという表示はタブが入力されていることを示します。

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まずは『●』の文字色、拡大率、字送りなどを調整して下図の体裁にします。字送り値をマイナスにすることで、直後の文字が『●』に重なった状態になります。
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白抜き文字用の文字スタイルを適用

次にベタ丸の直後の文字の文字色、拡大率、前後のアキを調整して下図の体裁にします。
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正規表現設定ダイアログは『(?<=●)[名動形副代接前]』と設定しました。『(?<=●)』は直前の文字が『●』という条件を示します。また『[名動形副代接前]』は『名』『動』『形』『副』『代』『接』『前』のいずれか1文字という意味です。

※『●』の直後がどんな文字でも構わないのであれば『[名動形副代接前]』の代わりに『 . 』(半角ピリオド)を入力します。



行頭の括弧に文字スタイルを適用

行頭の始め(起こし)括弧とアルファベット直後の終わり(受け)括弧を、等幅四分のスリムな括弧にします。
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正規表現設定ダイアログは『^(|)(?=\t)』と設定しました。『|』(またはという意味)より前の『^(』は「段落行頭直後の始め括弧」という意味です。後半の『)(?=\t)』は「直後にタブが存在する終わり括弧」という意味です。


括弧内のアルファベットに文字スタイルを適用

アルファベットは文字によって文字幅が異なることが多いため、ここまでの設定では終わり括弧の位置が正確に揃わないことがあります。そこで括弧に挟まれたアルファベットを等幅全角字形とし、さらに文字の前後をベタと指定します。
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正規表現設定ダイアログは『(?<=()[A-Z](?=))』と設定しました。『(?<=()』は「直前が始め括弧」という条件、『(?=))』は「直後が終わり括弧」という条件です。『[A-Z]』は「大文字アルファベットのうち1文字」という意味です。

Wordにおける編集者の作業

上記の正規表現スタイルを使用するためにはテキストデータに『●動』などのように入力しておけば良いわけですが、少し面倒です。入力漏れの可能性もありますし、『動』と直後の文字の書式が変わらないため確認ミスのおそれもありそうです。
そこでテキストデータ作成時は『●』を入力するのではなく『動』などの文字にWordの蛍光ペン機能を色をつけておくことをお勧めします。


すべてのテキストデータが完成してから、Wordの置換機能により蛍光ペン表示の直前に『●』を入力することができます。


下図は置換時の設定です。

※チェックボックスなどの操作については上の動画でご確認ください。

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おまけ……四角囲みの1桁・2桁数字

もう1つだけ例をお見せしましょう。正規表現スタイルで『□23』などを四角囲みの数字にしています。数字が1桁の場合は等幅半角字形、2桁の場合は等幅三分字形として『□』の中に収まるよう調整しています。


今回の2つの例は、少し設定が面倒で微調整も必要なものです。実際の業務の際はDTP作業者に事前準備の時間を十分に与えていただけますようお願いします。
サンプルデータ(2例)はこちら《minimum0530.zip》です(CS4以降)。
posted by 照山裕爾 at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | InDesign-書式・スタイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月29日

正規表現スタイルの活用例……計算式の括弧の前後を詰める

DTP作業者にとっての難易度 ★★☆☆☆(2)

下図のように文章内に計算式を記述するケースを考えます。
計算式(1行目)の括弧の前後にあるアキが気になるので、ここを詰める方法を検討しましょう。

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括弧の前後にアキが生じているのは『文字組みアキ量設定』(詳しくは《こちら》を参照)で『行中』の文字間が『50%(0%〜50%)』と設定されているからです。

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『行中』の値を『0%固定』に変更すれば1行目の括弧の前後は詰められます。しかし2行目の括弧の前も詰まってしまうので、その方法は採用できません。
この問題を解決するために正規表現スタイルを使用します。

括弧の前後のアキを詰める

まずは動画をご覧ください。




正規表現スタイルの設定は以下の通りです。

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上段は『(?<=[+−×÷=])(』に対して『前-ベタ』という名称の文字スタイルを適用するという設定です。
『(?<=[+−×÷=])』は「直前の文字が『+』『−』『×』『÷』『=』のいずれかであること」という条件を示しています。『(』は全角の始め括弧です。
下段は『)(?=[+−×÷=])』に対して『後-ベタ』という名称の文字スタイルを適用するという設定です。
『)』は全角の終わり括弧です。『(?=[+−×÷=])』は「直後の文字が『+』『−』『×』『÷』『=』のいずれかであること」という条件を示しています。

これで下図のように括弧の前後のアキが詰まりました。

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しかし上の画像をよく見ると、1行目の『−』の左右のアキ具合が違うことに気付きます。左側(『額』との間)はベタ、右側(『2』との間)は四分アキになっています。『×』と『4』の間も四分アキです。

ここに四分アキが生じているのは『文字組みアキ量設定』で『和欧間』が『25%(12.5%〜50%)』と設定されているからです。

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『和欧間』の値を『0%固定』に変更すれば数字と『+』『−』『×』『÷』『=』との文字間をベタにできます。しかし2行目の数字の前後も詰まってしまうので方法としては不適当です。
この問題も正規表現スタイルで解決しましょう。


計算記号の前後を八分アキにする

まずは動画をご覧ください。

※『+』『−』『×』『÷』『=』の前後をベタにすることもできますが、少し窮屈になりそうなので今回は前後とも八分アキに設定します。





追加した正規表現スタイルの設定は以下の通りです。

0529-105.png


『[+−×÷=]』に対して『前後-八分アキ』という名称の文字スタイルを適用するという設定です。
『[+−×÷=]』は「[ ]内のどの文字でも構わない」という条件を示しています。

この結果、下図のように『+』『−』『×』『÷』『=』の前後がすべて八分アキになりました。

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文字間がどのように変わっていったかを下図でご確認ください。

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今回のようなケースで、DTP作業者が1箇所ずつ手作業で文字スタイルを適用していくとしたら少々面倒です。全体の文章量が多くなれば負荷が大きくなり、ミスが生じる可能性も高くなります。正規表現スタイルは、そこから生まれるロスを軽減するのにとても役立つ機能なのです。
サンプルデータはこちら《minimum0529.zip》です(CS4以降)。
posted by 照山裕爾 at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | InDesign-書式・スタイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする